こんにちは、生きづらい人です。
39年生きてきて今さら気付いておどいたのは、周りの人・世間の人というのは、
繰り返される空虚な日々、先行きが見えない将来、みたいな悲観的な世の中でも
「そこそこ楽しく生きている」ということです。
去年、メンタルは病んではなかったのだけど、ひょんなことから心療内科に行くことになり、
明確な診断ではないのですが、ADHD・アスペルガーなる発達障害の疑義と指摘されました。
実感なく「あらら、そうなの?」くらいな受け取り方でしたが。
どうも生きづらいな、生きてて楽しくないな、と思ったらそういう理由だったんです。
普通に暮らす方に「どうつらいのか?」を理解してもらうべく説明してみたいと思います。
「つらい」は単語で言うなら「恐怖・不安・罪悪感・焦燥感」のごった煮なのですが、
これを仮に「つらさ」を「からさ」としてみましょう。「辛さ」で漢字が同じですし。
何か「しなくちゃ」と思うたびに、誰かと話すたび、何か失敗するたび、
みぞおちを中心に内的にハバネロ味の激辛エネルギーがぐるぐるぐるっ!ってなる感じです。
漫画表現なら、肺と胃が燃え盛るほどめちゃくちゃ辛いんです。ボワーッなんです。
これが「普通」かと思ってたのですが、そうじゃないだ、という気づきでした。
ハバネロをぶっかけてくるオバケの名前が「アスペルガー」とさえわかれば正体を掴めたのではないかと。
それで、オバケ退治をすべく何冊か発達障害の本を読んだんですが、あまり刺さらない。
それらは、基本は投薬治療しようぜー、Todoリストを作って利用しようぜー、10分前に行動しようぜー、みたいな、ものすごいダメな人向けの小手先対応のノウハウ集というか。
そんな中、amazon先生が「こんなの本どうかしら?(はぁん」と誘惑してきたのが、 「アスペルガーの人はなぜ生きづらいのか?」という本です。

アスペルガーの人はなぜ生きづらいのか? 大人の発達障害を考える (こころライブラリー)
- 作者: 米田衆介
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2011/12/17
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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読み始めたところ、最高の切れ味のある文章で焦げ付いた胸をえぐってくるではないですか。
少し誇張しますが、
「努力次第で変わる問題ではありません」
「慣れても改善しがたい」
「諦めるという選択肢もあります」
などなど。
アスペルガーは治る!なんていう妄想を断つことを教えてくれます。
もう鋭すぎて切られてもあまり苦しみません。むしろ痛快でした。
そんな「アスペルガーの人はなぜ生きづらいのか?」をまとめてみたいと思います。
まとめといっても書評と感想も含んだ乱文になっていることをご了承くださいませ。
普通に暮らす人の理解と、生きづらい誰かの助けになれば。
目次
アスペルガーの仕組み
何がつらいか?
アスペルガーな人には以下のような症状が起きます。
- 人の心がわからない
- 手順がおぼえられない
- ミスを連発する、そこから学習できない
- なぜか相手を怒らせる
こんなことが毎日起き、人間関係がうまくいかず、仕事などもうまくいかず、自己評価が極端に下がり、さらにはそれがまた症状を悪化させ、負のスパイラルに陥り抜け出せないため、生きづらいのです。
なぜ起きるのか?
アスペルガーに関して、物理的な説明は省略して、機能的なレイヤーで捉えます。
なぜ上記のような症状がでるかというと、以下のような特性のためです。
- シングルフォーカス特性
- シングルレイヤー思考特性
- ハイコントラスト知覚特性
これらがコアな特性になります。
「シングルフォーカス特性」は、注意が一度に一つしかいかない、ということです。風景があって電車を見ているとしたら、電車を中心に全体的な把握をできるのが普通ですが、電車だけという一部だけの把握になってしまいます。
「シングルレイヤー思考特性」は、同時的・重層的な思考が苦手、ということです。シングルフォーカスと相まって並列的に思考できず、並行した行動もできません。いっぺんに色々な情報を受け取ることもできません。
「ハイコントラスト知覚」は、白か黒かのような極端な感じ方になる、ということです。例えば疲労感などが、疲れてないか、動けないくらい疲れているかというのどちらかの極端にしか感じられない、などです。視覚や聴覚などのグラデーションが認知できないのではなく、あまり明るくない・めっちゃ明るい、聞こえにくい・めっちゃうるさい、みたいなことになる場合もある、ということです。
これらがからみあって、つらい状況を生み出しているということになります。
二次的な周辺特性
この3つを核とした特性として、二次的のようなその周辺の特性は以下です。
5個に分けられているのですが、それぞれ3つの核の特性の組み合わせで生じます。
- 記憶と学習に関する特性群
- 注意欠陥・多動特性群
- 自己モニター障害
- 運動制御関連特性群
- 情動制御関連特性群
それぞれ細かに見てみます。
記憶と学習に関する特性群
「記憶と学習に関する特性群」は、過去のエピソードを思い出すこと、手順などの記憶すること、が難しいということです。日常でルーチン化された日課や、身体の操作を学習することが難しいことになります。
折り重なったように考えることができないシングルレイヤー思考特性から生じると考えられます。
逆に、「AはBである」のような意味記憶は得意とされます。「カモノハシは哺乳類である」などの知識です。アスペルガーの子に、いわゆる物知りが時々いるのはそのためです。私自身もそうで、クイズ番組など大好きで回答者や家族より早く答えて悦に浸る子でした。
そんな希望な光にも「※ただし」とつけてくるのがこの本の切れ味するどいところ。
アスペルガー者が物知りだけれども、その知識が生かせないことがよくあるのは、 多くの場合に本当の意味での概念が形成できない結果があることがほとんどです。 (中略) まったく残念なことですが、これら記憶に関連した特性のために、 このような物知りなアスペルガー者は、健常者からは 「物を知っているくせに、まったく経験が積み上がらない鈍い人」 というふうに見えてしまいます。
そんな感じで、ちょくちょくこの本はさわやかな絶望を与えてくれます。
希望は、スキッとしたサイダーの泡のように何も残さず弾けて消えるのです。
注意欠陥・多動特性群
「注意欠陥・多動特性群」は、ADHD(注意欠陥・多動性障害)と同じ「注意欠陥=うっかり」「多動=おちつかない」の特性が伴うことがある、ということです。
気になったら他は何も考えられない状態は、シングルフォーカス特性・シングルレイヤー思考特性から生じると考えられます。
純粋なADHDの人と純粋なアスペルガーの人を仕事の場面で比較してみます。 ADHDの人は衝動性のために社会的な場面での不適切な言動があったり、熟慮にかけた行動のために誤解を受けやすくなる場合があります。 アスペルガーの人の場合、その仕事ぶりは乱雑かもしれませんが方向性は大きく間違ってないことが多いですが、仕事はだんだん進みます。
注目すべきは、アスペルガー障害にADHD症状が合併する場合があるということです。なぜならば私がこのタイプだからというのもあります。本ではこう斬りつけます。
アスペルガー障害にADHD症状が合併すると、シングルフォーカス特性と関連して、 仕事の最終的な全体像がイメージできていない場合が多くなります。 その結果として、おのずと方針自体が的外れになり、 少なくとも他人から見る限りは仕事の能率がまったく上がらなくなってしまいます。 この場合、アスペルガー者自身は本当に努力しているのに、健常者の視点からは 「無駄なことばかり延々とやっていながら、 本人は平気な顔で『頑張っています』などと主張する」 ように見えるので、周りの普通の人々は激怒することになります。
激怒って…。こりゃあ、社会に適合するのがますます困難なはずだわなぁ。
自己モニター障害
「自己モニター障害」は、自分の状態を自分で監視するという自己モニターが壊れている、ということです。
自己モニターを具体的に言うと、
- 「今、私はxxしています」
- 「私はxxの状態です」
- 「私はxxという特性があります」
などです。ある課題に対して、「これならできる」「これはできない」という自己能力に関する予測的な判断も含まれます。
対象に注意を向けている間は、自分の心や体の状態に同時に注意を向けることができないシングルフォーカス特性と、 薄いグレーや濃いグレーであるのに白と黒でしか考えられないハイコントラスト知覚特性から生じると考えられます。
ハイコントラスト知覚は、例えば「疲労」で説明すると、元気いっぱいor疲れて動けないの両極端でしか感じられず、微妙な内的感覚を把握することが難しい、ということです。
ここでのバッサリ絶望ポイントですが、「じゃあ自分の状態にシングルフォーカスすればいいんじゃない?」という希望を
自己の状態に意識が捕らわれると、シングルフォーカス性によって、 今度は自己認識だけにとらわれるようになってしまいます。
と葬ります。
瞑想はがんばればできるけど、それを生活に全く役立たない感じがしてるのはこれかもしれません…。
運動制御関連特性群
「運動制御関連特性群」は、不器用、姿勢の悪さ、まねができない、運動学習の障害などがあるということです。
特に、動作や姿勢の保持にともなって、脱力することの難しさが観測されるそうです。
確かにそれは感じてます、PCでこの文章を打っている時も異常なレベルで肩に力が入ってしまってます。同時に意識するのが難しい、ということなんだと思います。
周辺特性の一項目ごとに絶望ポイントがあるように感じられるのですが、ここではこうです。
新しい動作の学習には、通常の何倍もの訓練を必要としています。
うおー、ギブミー通常。
個人的なところかもしれませんが、新しい動作だけでなく、学習の難しさと自己モニター障害などの特性から、何かしらの技能やスポーツの上達というものも極端に遅い気がしています。
情動制御関連特性群
「情動制御関連特性群」は、気分を自分でコントロールできない、ということです。やる気のなさや怒りなどネガティブな感情を払拭できなかったり、衝動的に怒ってしまう、などです。
シングルレイヤー思考特性、ハイコントラスト知覚特性からおきると考えらます。
- 自分の不快さの蓄積を自分でモニターできないために、怒りを小出しにすることや他で解消することができず、堰を切ったように怒ってしまう
- 一つのことしk考えられず、特定の感覚ばかりに注意が居着いてしまうことによって、特定の感情から離れることが困難になる
といったことです。
ここの項目で個人的ツボ(回復というより死にそうになる刺激)だったのは、次の文章です。
内部感覚の欠如は、モチベーションの基礎となる感情にも及んでいます。 アスペルガー者はしばしば、 「何か感情が湧いてこない時がある」 と訴えることがあります。 (中略) たんに内部感覚としての自己の感情を捉えるのに失敗しているのだ、 と考えたほうが適切になります。
「これがしたい!」というのがない無気力な性格、と思いきや、感情を捉えるのに失敗してたんですね…。
ごめんね、私のモチベーションさん。
まとめ
具体的な特性は以下でした。
- 記憶と学習に関する特性群
- 注意欠陥・多動特性群
- 自己モニター障害
- 運動制御関連特性群
- 情動制御関連特性群
これらの特性のために、アスペルガーの人には
→全体を把握できない
→誰かに聞いても話を理解できない
→目的がわからない
→手順覚えられない
→状態を把握できない
→向上しない
→全体を把握できない
→…
という最悪のスパイラルが発生し、一周ごとに自己評価をさげて苦しむという、抜け出せない無間地獄を生みます。
アスペルガーは救われるのか?
わずかな希望に期待しつつ残りも読み進めます。
次は、社会への不適合としてどう表れるか?とその対策です。
つづく。