前回の続きです。
米田衆介著のアスペルガーの人はなぜ生きづらいのか?のまとめというか書評というか実況です。
おさらいしますと、この本では「社会にマッチしないこと」という意味である「不適応」は、5つの不適応タイプでした。
- 社会的能力に関係した不適応
- 作業能力に関係した不適応
- 自己統制に関係した不適応
- 過敏性と易疲労性の不適応
- 能力障害以外の不適応
前回は、「社会的能力に関係した不適応」についてまとめました。 今回は、「作業能力に関係した不適応」についてのまとめです。
「作業能力に関係した不適応」とは、「様々な仕事・運動・生活行動において異様にうまくできないこと」です。
その重症度は、何か頼まれても理解できない、効率が異常に悪い、優先順位がおかしい、不器用などから、学習障害・運動障害まで、多岐にわたります。
ですので、障害支援学級に在籍する子供たちだけの話ではありません。
学校や受験など、いわゆる「勉強」では問題ないけども、職場など現実的な場面での作業だと、能力の限界が露わになったりする大人にも該当するので、この作業能力の不適応は厄介な問題です。
本では「作業能力に関係した不適応」を4つのタイプに分類しています。
- 作業の意味の理解の問題による不適応
- 手順の学習と計画性の問題による不適応
- 身体的な不器用さの問題による不適応
- 個別の学業スキルの障害の問題による不適応
それぞれについて詳細を見ていきましょう。
目次
作業の意味の理解の問題による不適応
作業の意味の理解の問題による不適応とは、「作業の意味自体がわからないからうまくできない/やりたくない」「他人の曖昧な指示を理解できない」という、問題です。
原因は、まとめその1で説明した「シングルフォーカス特性」「シングルレイヤー思考特性」「記憶と学習に関する症候群」のアスペルガーの特性です。
一般的には、表面的なコミュニケーションの問題とされがちですが、アスペルガー相手だとそれでは改善されないのです。「ふつうはこうですよね」は「過去の例から類推するとこうなる」という意味なのですが、そういった過去を引き出すことがうまくできないので驚くほど通じません。
対策ですが本では示されてません。「作業のロジカルに意味を説明してもらう」が対策になると予想します。
具体的には「〇〇をしてください、△△という上位の目標を達成するためで、これをしない××という不利益が発生します」のようなことです。
自分で言うのもなんですが、扱いがめんどくさいですね。
手順の学習と計画性の問題による不適応
手順の学習と計画性の問題による不適応は、作業の実施にあたって、手順が覚えられない・計画が立てられない、という問題です。
原因は、「シングルレイヤー思考特性」「エピソード記憶の障害」「手続き記憶の障害」などのアスペルガーの特性です。
おそらく健常者では、ある種の手続き記憶の一部として、 作業手順の再構成が自動的に可能であるのだと思われます。 (中略) こうした能力は、それにかけている人々にとっては、 魔法とあまり違わないようにさえ見えています。
そうなんですよね、普通の人から見たらもう「呪い」にかけられているみたいだと思います。料理とかで軽くパニックしている様子とか。
対策ですが、代替手段として、細かいルールの記憶と視覚的な記憶です。
細かいルールとは、「もしAの状況で、Bという結果をえるなら、Cをする」ということを沢山覚える事です。
視覚的な記憶とは映画みたいに丸ごと覚えてしまうことです。
絶望ポイントとしては、細かいルールは問題が多すぎると破綻することと、映画みたいに記憶しても柔軟性がない、というところですね…。泣けます。
身体的な不器用さの問題による不適応
身体的な不器用さの問題による不適応は、手先や手足の動作が不器用であるという問題です。
異様な運動音痴やら、何かするにしても器用にできない、うまく真似ができない、などですね。
原因は、「シングルフォーカス特性」「自己モニター障害」などと思われます。何かに集中すると、他が全くの疎かになります。
対策ですが、通常よりも多い訓練、という面白くない事になります。
絶望ポイントですが、訓練しても、道具が変わったとか、急がされた、環境が変わったなどで、驚くほど部屋になることがある、という限界があることですね。
悲しいけど、固定されたスキルで通じるフィールドで戦うしかなさそうです。
個別の学業スキルの障害の問題による不適応
個別の学業スキルの障害の問題による不適応は、漢字読字、計算、英語スペル、などの学習における問題です。
漢字が認知症と疑いたくなるほどびっくりするくらい書けない、などが具体例です。
ただ、全体的な知能の障害、精神遅延など複雑にからみあって医学的な判断が必要になるので、軽率な判断をさける必要があります。
対策ですが、学校では支援に頼るとして、就労の場面では苦手な分野がある職場は徹底的に避ける、ことです。
計算・漢字の書きなどはPCに頼る、英語の使わない職場を選ぶ、など自分の改善ではなく環境を利用するということになりますね。
まとめ
アスペルガーの作業能力に関係した不適応についてまとめました。
- 作業の意味の理解の問題による不適応
- 手順の学習と計画性の問題による不適応
- 身体的な不器用さの問題による不適応
- 個別の学業スキルの障害の問題による不適応
という4つのタイプはどういう症状か、それらがどのくらい自分に当てはまるかを理解し、それらの対策を実行していくしかありません。
前回の「社会的能力に関係した不適応」と同様、完全な改善はないのと周りの協力や環境づくりが必須、というのが悲しい現実です。。
作業の問題において大事なのは、不器用な自分を責めないこと、それを受け入れて淡々と対策を育てていくこと、ではないでしょうか?
これは作業以外にも、アスペルガー道を進む上で態度、と私は考えています。
さて次回は、不適応の続きをまとめていきます。

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