人生は問題だらけだ。仕事、学校、プライベート。問題がないことはない!
「なぜ問題を解決するかって? そこに問題があるからだ」
そんなことを言った登山家もいたとかいないとか。
それゆえか、世の中には問題を解決すべく様々な問題解決本があふれています。
しかしどれもこれも、
「MECE」「ピラミッド構造」「帰納法・演繹法」「制約理論」…
などのフレームワークを駆使した論理的な思考本なんですね。
なんだろう、ものすごい味気ないんですよね、こういう本って。
人間味が少ないというか。ワゴムをクチャクチャ食べている感じの無味っぷり。
人から与えらた人のための問題を人のフンドシを使って解く。
みたいな感じすらします。作業的で熱くなれる要素がないんですよね、クールな左脳的で冷めちゃってる。
でも、問題解決がしたいのです、問題があるから。
問題という山を登る登山家なのです。でも軽装で突っ込んでいって、吹雪で遭難し引き返すこともしばしば。
何か、登山道具が足りないんだ。
そんな中、ぶらりと寄った書店で見かけた本がありました。

- 作者: ベティ・エドワーズ,高橋早苗
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2014/06/18
- メディア: 単行本
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表紙だけじゃよくわからないんです。 創造性を上げる本なのか、絵の能力を上げる本なのか、みたいな。
こちらの冒頭で
創造性とはなんでしょう? それは問題解決をうながす力であり、 効果的な意思決定を導く力であり、 人間の願望や知性のニューフロンティアを切り開く力です。
本書では、彼女は創造性のプロセスの秘密を解き明かし、 日常の問題に応用できるように手助けくれています。
とあるので問題解決の本であるようです。ので、購入。
読み終えた結果、問題解決本の中でもかなりの異端本である、という結論に至りました。
内容まとめると、 「問題解決を、デッサン能力を上げ、右脳的アプローチで行う」 という、一見するとクレイジーな手法だからです。
しかし、この著者ベティー・エドワーズさんはデッサン本なのに300万部ベストセラー「脳の右側で描け」の作者なんですね。

- 作者: ベティ・エドワーズ,野中邦子
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2013/01/18
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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つまり、この本は「問題で右脳で解く」の本なのです。
世の中の問題解決本は論理的な左脳本なので、その逆。
問題はいつも手強い。だからこそ全力でぶつかる必要があります。
だからこそ左脳だけでなく右脳も駆使することが求められます。
それゆえ、左脳ではなく右脳で問題を解くこの本は熱い!
そもそも問題とは何か?から説明しています。
本当の問題は自分の中にある言葉になっていないイメージであるということも。
それゆえ、人の問題ではなく自分の問題を解くこの本は熱い!
というわけで、窯出したてピザを耐熱手袋ごしにつかんで口に頬張った時のように熱いこの本の内容を、問題登山家の皆様に紹介したいと思います。
創造のプロセス
創造性なんて辞書なんかは「創造する能力」とまぁ曖昧定義で逃げるような言葉なのですが、著者が創造性について書かれた様々な本を研究した結果、問題を解決するプロセスがある、ということを見出しました。
そのプロセスは、以下の5つのステップです。
- 最初の直感(問題発見)
- 浸透(調査)
- 孵卵(調査内容からの思考)
- 啓示(発見)
- 検証(有用性の確認)
これは、アイデア本の名著ジェームス・W・ヤングの「アイデアのくつり方」とほぼ同じ、1の問題発見が追加されているだけですね。 様々な創造性に関する記述は、大概この5つのステップからなるということです。
4の「啓示(発見)」だけが他の論理的なステップと異なりますね。
解決というゴールへの門番と言えそうです。「創造性」のキーポイントです。
アルキメデスが王様から「王冠に銀が混ざってないか壊さないで調べてくれや」と言われ、
「あぁー、もうあかん。マジわからへんわ。こんだけ調べまくって実験しまくっても全然正解にたどり着けへん。もう、めっちゃだっるぅ。風呂でもはいろ。」
(ザッパァーン)
「あ”〜〜〜!風呂マジ最高、ごっつ気持ちええわぁ!これ絶対2000年先も変わらへん普遍の気持ちよさや。疲れ吹き飛ぶわ〜〜〜。ふぅ〜。…………………。ざっぱぁーん? あ!王冠と同じ重さの金塊を風呂に入れたら体積の違いで銀入っているかわからへんか? うぉぉぉぉおおおお、ヘウーレカァアアア!!ヘウゥゥゥーーレカァァアアアー!!」
「キャーーーーー!!おまわりさーん!外に裸で飛び出して叫び回ってる男がいます!」
(ピーポーピーポー)
なんて話が「啓示」として有名ですね。
しかし、こういった伝説が「創造性はセンスや才能が必要である」という誤解を生じさせています。私は創造性がない、なんていう暗黙的な諦めに至っていることが多いです。
この本では、創造性は技術である、と断言しています。技術は、文字の読み書き同様、身につくのです。
問題とその解決は、言語を超えたところから来ます。言葉ではないのです。それを絵により視覚的に捉えるのです。
そのための技能を身につける方法について書かれたのが、この「内なる創造性を引き出せ」ということになります。
問題の形
問題解決たるもの問題があってこそ。
学校のテストの問題、仕事での売り上げ回復の問題など、これらは目に見えている問題であり、他人の課題・他人の作った課題です。
一方、「自分自身の問題」は目に見えません。他人は私の問題を形にできないですし、自分の中でも説明できるほど形にはなっていないし、自分で気づいてすらないこともあるからです。
では、目に見えるようにする必要があります。どうやって?
この本では、「アナログ問題画」という方法を提唱しています。
どんなものかは、見た方が早いのでこちら。
こんな感じで、言葉なし、シンボルなしの線だけ=アナログで書きます。
本来、体で起きる感情などは言葉では表せません。それに対して「喜び」「悲しみ」などラベルを貼り付けて扱っています。
自分自身の問題は、 ラベル付けする思考の層よりも深い層にあります。それゆえ目に見えない、言葉にできないのです。
そのためラベルを使わない手段により、深層にある自分自信の問題を扱う方法をとります。
具体的な手順を抜き出すと以下です。
問題をアナログ画にする手順
自分の状況を心の目で多面的に観察し、問題の原因となっていそうな点を一つえらんでください。つまり、しっくりこない点や理解しきれずにいる点です。問題は、仕事のことかもしれないし、人間関係かもしれないし、社会情勢に関することかもしれません。自分にとって重要であればあるほど適しています。
描く前に問題に名前をつけてはいけません。言葉を使って考えるのも控えめにしましょう。
これがどんな絵になるか前もってわかっている必要はありません。書く目的は発見することです。解決でもありません。
鉛筆と消しゴムを使って書きます
最初に境界線を引きます。問題を一本の線で囲みます。
自分が書いているものを検閲してはいけません、勇気を出して絵が神の上に現れるままに書いてください。具体的な対象物やそれとわかる記号を書かないように。必要に応じて、何枚書いても構いません。
アナログ画の意味を引き出す
皆様の問題アナログ画はできあがったでしょうか?
私自身のアナログ画はこんな感じです。
この言葉なしで描いたアナログ画に、言葉を使って分析していきます。
言葉はこのアナログ画の裏に書きましょう。言葉とイメージは「魔ゼルな規犬」というバンド名でオチがついて曲は知られていないビジュアル系バンドと似ている格言である「混ぜるな危険」であるからです。
まずはタイトルです。何を思って描いたか、全体を見て何を思い浮かべるか、などから決めます。
私のアナログ画のタイトルは、どうやら「人生で本当にしたい仕事」でした。
次に部分部分を読み解いていきます。
この本曰く「線一本一本に意味がある」です。
この部分の形、場所、密度、色の濃い薄い、他の部分と組み合わせ、などからそれが何を表しているのか推理しましょう。
私の場合だと、何か花火が弾けるような放射が見て取れます。おそらく「内なるエネルギーの拡大」あたりを表していそうです。爆発的にイキイキできる仕事、もしくはイキイキさせる仕事、と見ています。
また、絵を逆さまにするのも有用であるとも本は書いてます。様々な視点から自分の問題を観察しましょう。
このようにして、自分の問題アナログ画の理解を掘り下げていきます。
浸透のための技法
問題が目にみえる形になりました。
ここまでが創造のプロセスの「最初の直感」です。
アナログ画という右脳的な手段の後、解析という左脳的な手段を用いました。
まさに、脳の全てを使った思考方法と言えます。
これ以降のプロセスである浸透・孵卵・啓発にも右脳的アプローチを用いていきます。
具体的には「デッサン」の技法です。「デッサン」の技法によりより問題をあらわにしていきます。
具体的には、以下の5つの技法です。
- 問題の「エッジ」を知覚する
- 問題の「ネガ・スペース」を知覚する
- 問題の「相互関係とプロポーション」を知覚する
- 問題の「光と影」を知覚する
- 問題の「ゲシュタルト(全体性)」を知覚する
これまで問題をフレームワークで捉えてきた脳にはチンプンカンプンだと思います。
左脳「おいおい、デッサンの技法じゃねぇか。問題は誰でも同じように扱える言葉で解くべきだろ」
みたいな。
ごもっとも、論理的にはそうでしょう。しかし、直感の右脳を利用するにはデッサンの技術で問題を捉えるのが有用です。
少し長くなりましたので続きは次回の記事に、それぞれの詳細を書きます。
後編へつづく